沖縄を蝕む「補助金中毒」の真実 を読んでの感想
沖縄を蝕む「補助金中毒」の真実 (宝島社新書) 山城 幸松 https://www.amazon.co.jp/dp/4800267668/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_Dw01ybJF3RBPQ
タイトルに目を惹かれて購入。
沖縄の「基地問題」全般を「お金」の面を中心に切り込んでいます。
著書中に用いたデータは県が発表しているものを使っています。したがって、この著書の主張に意義があれば自分でデータ元にあたって分析し直すことで反論することができますね。
最近話題の沖縄基地問題として「高江ヘリパッド」や「普天間基地の辺野古移設」があげられますが、非常に賛否の分かれる問題。
「否」の方の意見としては「米軍の犯罪や土地提供をしている負担」「環境問題」を主な主張をよく気がします。
「賛」の意見をネット以外で見ることは少ないのですが、「安全保障」の問題と絡めて議論されることが非常に多い。
「そんなこと言っても沖縄に基地がないと、中国に攻められてオワリじゃ〜ん」的な。非常に合理性のある回答であり、感情論以外では反論の術がないように感じます。
しかし著書では、「基地問題」がなくならない一番の理由は「お金」の問題である、とし、いろんな場面で「沖縄」と「基地」と「お金」の関係を論じています。
各章ごとに「○初めて知ったこと」「●印象に残ったこと」を書いていきます(まとめではありません)。
第1章「なぜ沖縄から基地がなくならないのか?」
●「普天間基地は「世界で一番危険な基地」と称され、(略)沖縄のマスコミの常套句として使われるようになった。(略)しかし、じつは日本で最も米軍基地の被害を被っているのは、米海軍と海上自衛隊が共用する厚木海軍飛行場を抱えている神奈川県である。(普天間よりも事故被害・騒音被害が多い)」
○「国庫支出金の額は3858億円と全国10位の規模であるが、人口一人当たりでは全国1位となっている。また、全国の都道府県で沖縄だけは、地方交付税(客観的な計算式によって金額決定)に比べて国庫支出金(自治体が国に請求)の額が極めて多い。」
○補助金いろいろ(公共事業)※時限立法だが8回延長していまだ継続
ガソリン安い
航空燃料安い
泡盛・ビールに酒税減(酒税減税額の方が、泡盛業界の年間利益より多い)
○使用の必要がなくなった施設・区域は、日本側に返還しなければならないと日米地位協定に記載(稲嶺名護市長が基地を返還しないように米側に要請した際の、当時の大臣の主張の根拠)
第2章「普天間基地問題の裏事情」
第3章「米軍は本当に悪なのか?」
●「(冷戦中)日本政府は核の傘に入ることを求めるものの本土での核持込みを黙認するというダブルスタンダードを用いたのだ。沖縄に米軍基地が集中している理由は、沖縄のもつ地政学的な意味に加えて、アメリカ統治下として核持込みが自由だったこともある」
●沖縄に原発がない理由→安全保障上の問題もある。
第4章「翁長VS仲井眞に見る沖縄の病」
●「これまでの沖縄知事選挙は表面上は保革の対立構造としながらも結局のところは、政府を相手にごねることで、いかに振興予算を引き出すかという点が重要であった。
沖縄の政治において、優秀なリーダーに求められる資質とは、いかに振興予算を獲得するかという能力と技術なのだ。」
第5章「沖縄の歴史と県民の現実気質」
●沖縄、琉球を象徴する観光施設である首里城の守礼門にも沖縄県民の負のメンタリティを見ることができる。そこに掲げられている扁額の文字「守禮之邦」とは「中華皇帝に対して臣従の礼を守っている邦」の意味であり、沖縄の事大主義を具現化した言葉である。中国から冊封使がきている間は、「守禮之邦」の扁額を掲げ、それ以外の期間は「首里」の扁額を掲げていた。
●泡盛がおいしくない理由は、この古酒となる熟成期間を待たず、目先の利益のために若い泡盛を販売してしまう蔵元に要因がある。
第6章「補助金中毒に陥る沖縄経済」
○県民の平均所得は全国最下位であるが、その反面、深刻所得1000万円以上の割合は全国でも上位にある。
●うまくいかない跡地利用:短期的な収益性を考え、ショッピングモールやパチンコ屋、居酒屋的なありがちな街になる。
理由→米軍基地の賃料が高すぎるため、地主が基地返還後に基地賃料程度の採算が合うような開発にしかならない。
第7章「補助金中毒からの脱出」
●沖縄が参考にすべき島国経済
ハワイ:基地があるが、「フラ」文化も触れ合うことができる。沖縄のチープなチェーン店が並ぶものとは違う。
香港:タックスヘイブン
まぁ気になったことはこんな感じ。
沖縄基地問題を議論する上で必要な話題が入っていることは間違いない。
嘘だデマだと否定する人もいらっしゃるでしょうが。
いろんな情報得て、判断していきたいですね。