グレ教員の日々の感想

学校嫌いな小学校支援学級教員。日々の思いを忘れないように書くブログ。子育て、学校、読んだ本とか。専門は発達障害支援。

「理系が得意な子の育て方」を読んだ感想

あけましておめでとうございます。
 
新年1発目の記事ですね。
と言っても、そんなに頻繁に更新しているようなブログではないのですけどね。
2020年も同じようなペースで感想記事と雑感記事を投下していければいいかなと思っています。
 
今日は一冊読んだ本の感想。
 

 

10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方

10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方

  • 作者:今木智隆
  • 出版社/メーカー: 文響社
  • 発売日: 2019/11/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

1.本の概要

1-1.作者の背景

著者はRISU Japan株式会社(以下RISU)代表取締役の今木智隆さん。
RISUはタブレットを利用した小学生向けの算数教材を販売しているみたいです。
様々な算数のデータ分析をもとに最適化された算数教育を売りにしているみたいですね。
 

1-2.主題

1章では、「やってはいけない算数教育」についての例をあげ、子どもが算数でつまずきにくい算数のより最適な学習法を提案するとともに、具体的に提示しています。
2章では、算数のおさえるべき内容(つまずくポイント)を4つに分類し、それぞれ有効な学習法をしています。
3章では文章題についての考え方を。4章では「理系に育てると人生で得すること」をまとめています。
本全体を通して、RISUの教材がいいものだよ、って話がちょくちょく出てきます。
  

2.本の感想

 

2-1.本の出会い

ずっと気になってたんですよね・・・。
この本というより、自分が小学校で勤めるようになって、「みんなそれぞれ習熟度が違うのに、みんな同じ勉強をしている」ことに。
前の記事でも少し触れましたが、「わかっていないのに次の段階に進んでいる」子が一定数小学校にはいます。この子達って問題が小学校で顕在化すればいいんですけど、多くは中高でつまずくだろうな、ってくらいの際どい水準の子達なんですよね。後述しますが、この本でも書かれている通り、小学校では【理解していなくても】テストでそこそこ70点くらいの点が取れてしまいますからね。
 
まぁそんなこんなで【算数の教え方】が学校だけでは不十分というのはわかっていましたので、それについての本はちょくちょく手にとっていましたので、この本もその1冊ですかね。がっつり読んだのは、この本があまり複雑に書いていなく、わかりやすかったからですかね。
 

2-2.タイトルで勘違いしちゃうと勿体ない。

本のタイトルは「理系が得意な子の育て方」とありましたが、内容は「わが子を【算数が苦手】にしないために」みたいなことの方が正確かな~、と思いました(いや、センスないとか思ったら聞き逃してね)。まぁ突き詰めれば一緒なんですけどね。この本って、難しいことは書いていなくて、中学受験とかするような難しい算数のことではないんですよ。「【算数の基礎】をしっかり理解させようね」「そのためには○○のような学習はしないほうがいよ」っていう内容だと解釈しています。つまり、ほとんどの小学生にあてはまる内容かな。タイトルを「理系の得意な~」にしたのはどういった意図なんでしょうか。「別に【理系】とかどうでもいいし」っていう保護者の方は手に取らないかも、と思ってしまいました(本を手に取ってほしい人たちはむしろそっちなのでは?)。
 

2-3.小学校教師にとって残念な真実

 
1章では、算数の『残念な真実』と称して、15個の算数苦手になる項目を提示しています。
その中で1つ印象に残ったのは
 
『算数嫌いは「算数を教えるのが得意」な先生のもとで生まれている』っていう項目。
 
この項目では先生と児童へのアンケートの集計から、「算数を教えるのは得意と思っている」先生が多いのに、「算数が苦手だと思っている」児童が多いことをあげ、先生が子供たちの理解していないことに気づいていないのでは?という仮説を提示しています。解決策として本書は「算数を学校に任せきりにしない」を提示しています。
 
正直、「ギクッ!」です。私も算数は得意で、算数を教えるのが得意だと思っていたのですが、個別指導したときに、「あれ?全体の説明では子どもが理解していないな?」ってことが多々あり、今一度自分の指導を見直そうと思いました。
 
他にも、「宿題をさせると子供の学力は下がる!?」や「テストが毎回70点の子が[算数苦手予備軍]」などの項目があり、学校のシステムは最適じゃないことを暗に指摘している内容かと思います。
 

2-4.【保護者の方へ】「学校任せにしちゃだめよ。」

 
全部読んだ上で、私は算数教育についての考え方は本書に概ね同意します。
 
今の小学校って算数については本当にレベルが低いと思っています。というか、算数を学ぶことだけでいうと一番よい環境ではない。前の記事で書いた、「教員のスキル」もさることながら、システムがよくない。系統的に学習できるようになっていないんです。
本書の例でいうと、2年生で「位の概念」を理解しきれなかった子どもは、「小数」の概念がでてきたときに間違いなくつまずく。本来、つまずいたときには前の学年の単元に戻って学習すべきなんだけど、そういったことはできない。なので、一度つまづくとつまづきつづけることになります。そして、小人数指導などがない限り(あっても大したことはできないでしょう。その学年の学習はやらされますからね)その子たちは放置されます。
 
何が言いたいかというと、小学校に算数任せちゃだめよ、ってこと。
 
怖いのが、「理解できていない」ことがわかるのが、「つまずく」ときで、そこには時間的なラグがあるんです。(ex.2年生の内容を理解していなかったので3年生でつまずいた)小学校の単元テストっていうのもめちゃくちゃ問題で、理解していなくても点数が比較的出るような形式になっているので、理解していないことに気づかないんですよね。理解しているかどうか、は保護者がその子をしっかり見ていく必要がありますよ。

2-5.先生にできることはあるか?

直接的な表現はなかったものの、学校の算数に対して、厳しい指摘をしてくれている本じゃないかなあ。じゃあ先生たち、学校って何かできることあるの?ってことで。
 
まぁ担任の先生がどれだけ「子供が理解しているか?」の判断に意識を割けるかじゃないですかね?実際は必修内容に対して時数が少ない印象を受けるので相当難しいと思いますが。
あとは、しょうもないことで「算数嫌いにしない」意識を持つことは重要かもしれないですね、せめて。
 
典型的な例を出すと、「掛け算や足し算の順序指導」ですよね。私はあんなもの愚の骨頂だと思っていますが、Twitter界隈見ていると、「『掛け算の順序が違う』ことで×をつける」先生がいっぱいいるようですね。その指導で得られるリターンよりも『子どもが【算数嫌い】になるデメリット』の方が大きいことを考えないのでしょうか、って感じですね。
 

2-6.RISUについて

最後に。正直RISUの教材の宣伝が半分くらいなのかな、と思います。
RISUのホームページを拝見しましたが、個人的な感想を言えば「効果が出るなら高くはないけど、安直に始めるほど安くもない」という感じです。
まだ子供が小さいので現状考えていませんが、就学が近づいたら算数教材の選択肢のひとつとなりうるかもしれません。
 

まとめ

・家庭での算数の指導について重要なことは書いてある。未就学~小学生の保護者は全員読んで損なし。
・小学校の先生は読んでおくと普段の指導が変わると思う。
・教材についてはやってみないとわからない。保留。