グレ教員の日々の感想

学校嫌いな小学校支援学級教員。日々の思いを忘れないように書くブログ。子育て、学校、読んだ本とか。専門は発達障害支援。

「教師の働き方を変える時短」を読んだ感想〜これくらいもしていない教師は多いってこと、、、。つまり伸びしろ大!

 

教師の働き方を変える時短

教師の働き方を変える時短

 

 

本の概要

著者は小学校の現職の先生。著者が実践している「学校での時短術」のアイデアを40個、紹介しています。

学校という特殊な現場に特化して書いているため、初めて「時短」を意識したという先生もすぐ使える内容になっているかと思います。

 

本の感想

斬新なアイデアはさほど...

時短系のビジネス書は本屋に行けばいくらでもありますし、「早く帰りたい、仕事を早く終わらせたい」と思ったことがある人なら教員をしている人なら少なからず手にとっているでしょう。ということで、時短系の本をよく読んでいる人ならそこまで大きな発見はないかもしれません。

 

学校に特化した「時短」

とは言っても、これまで我々教師がビジネス書等の「時短」本を読んだ際、自分の職場で実践するために、要素を抜き出して変換する作業が必要でした。学校っていう職場はかなり特殊な場ですからね。それをすっとばして明日から学校でできる技がたくさん書かれているこの本。この世に学校で使える時短技はいくつも存在しているのでしょうが、その多くはこの本で学べるのかも。そういった意味で「時短」をあまり意識していない教員にとってこの本は良書となるでしょう。

 

個人でできないことも書いてあります

この本では、回覧やめましょう、など管理職や委員会レベルでなんとかしなければならないことも書いてあります。回覧については結構ビジネス書でも見ますよね。「スタンプラリーが日本の生産性を落としている」とかね。(スタンプラリーってのは回覧チェックのシステムのこと、「見ましたよ~」っていう意味で書類に印鑑を落としていき、最後の管理職の印鑑がもらえたら決済できる、ってやつ。)

個人レベルではどうにもなりませんが、「アレって意味ないよね」って思っている教員が増えるともしかしたらなにか変わるかもしれないし。「個人でできる時短」と「組織(学校)でできる時短」を頭に入れておくとよいかもしれないですね。

 

心に残ったこと

「そもそも教師としての業務量が膨大なので、優先順位を決めても効率化はしにくいのです」

P.41 原則04仕事に優先順位をつけ「ない」より

ビジネス書だと殆どの場合「優先順位をつけよ」っていうのが多数派なので、おっ、と思いました。最近ではこの考え方も増えてきているようです。

www.lifehacker.jp

半分賛成で半分反対。優先順位をつけるのに時間をかけるのは本末転倒ですが、優先順位をつけ続けていると「やらなくてよい」仕事に気づけることがあるので、優先順位の意識は重要だと思います。

私はいまは仕事を前日のうちに、「「明日中にやる」「それ以降でも良い」ものに分けて日々仕事を行なっています。Todoist というアプリで管理しています。

apps.apple.com

 

Ctrl+Cでコピー、 Ctrl+Vでペースト

P.108 「ショートカットで仕事を倍速に」より

 

マジかよ、って内容ですがこれも40個のアイデアのひとつとして1項目として紹介されています。わかっている人にとっては「学校の先生ヤバww」ってなるかもしれませんが、それほどまで学校というものは「時間をかけずに仕事を行う」ことが意識されてこなかったとも言えるでしょう。個人の体感ですがこのショートカットすら知らない先生、たくさんいると思います。こういう基本的なことを教えてくれるのもこの本の魅力です。

ちなみに私はショートカットはおろか、コピー&ペーストすら知らない先生と組んだことがありますよ。その方は去年と同じ内容の書類が出したくて、去年のデータを開き、紙に印刷し、その紙を見ながら一字一句同じ文章をワープロで打ちこんでいました。

 

まとめ

教員の「時短」本としては秀逸かと。学校に1冊おいてみんなでよんでもいいですね。

 

 

karly1008.hatenablog.com

 

「学校の時間対効果を見直す」を読んだ感想 うちの学校の職員全員読んでほしい

 

学校の時間対効果を見直す! ―エビデンスで効果が上がる16の教育事例

学校の時間対効果を見直す! ―エビデンスで効果が上がる16の教育事例

 

本の概要

 

学校現場では、漫然と「これまでやっていたから・・・」といった理由で続けられているものが多数ある。

「宿題を出す」ことや「授業の終わりに振り返りをする」

これらは、本当に効果があるのか?

また、「ICT」や「協同学習」など、「よさそうだから」など新しい活動もやるかやらないか、という選択も入ってきます。

これらは、本当にやる意義があるのか?

本書では、これらの活動に「時間対効果」エビデンス(科学的根拠)」の2つを軸に教育現場の「その活動はやる意義があるのか」を分析する。

 

読み終えた感想

割と待ってた内容。

学校現場には、「エビデンス」とか「時間対効果(費用対効果)」の感覚が、まったくありません。

なにかを「やる」ことや「やらない」決定をする際に材料となるのが、「これまでやってきたから」と「周りの学校もやってるから」といった思考停止が横行しています。

 

そして、ビジネス書ではこの手の話、結構あったと思うんですけど、教育書ではかなり珍しいのではないでしょうか。いろんな人に読んでほしい内容になるかと思います。

 

エビデンス」について

経験則ですが、科学的思考に基づいて物事を判断する意識をもっている学校職員が少ないのが、現場にあたっているのが現状かと思っています。大学で研究活動をやっていた人が少ないのも一端かな~、と思っていますが。(教育学部では研究をしない、論文を書かないところも多いですよね)

その中で、社会全体でも「エビデンス」という言葉が聞かれるようになり、教育書(教員向けの本)にもでてくるようになったか~、と思いました。嬉しい限りですね。効果量(effect size)という言葉を教師向けの本で見る日が来るとは思いませんでした。

 

「時間対効果」について

上記のエビデンスから「期待できる子どもの学習効果」について「コスト(教師の労力やお金、時間)がどれだけかかるか」を考え、実際にやるかどうか議論する材料にすべしと本書では示唆しています。

 

これまで「学習効果」について論じた教育書や研究では、最終的には学校現場での実践を提案するわけですが、けど、それらの多くは「それを実施するコスト」を無視して提案されているものがほとんどでした不十分なもの(と私が感じた)がほとんどでした。

 

しかし、実際の現場では、ほんとに数え切れないほどの学習活動や行事が動いており、「ひとつの活動に避ける時間や労力(と予算)」が有限なのです。なので、「時間対効果」を学校に入れようとするこの本の主旨はとてつもなく意義のあるものだと思います。というか学習効果の議論するのにコストの概念は必須だと思うのですが、なぜだかあまり議論されてきませんでした。

 

学校での働き方改革が進んだから出た本?

この「時間対効果」のある仕事を~!ってビジネス書や自己啓発本の定番というか前提となる考え方ですよね。

これまで、教育会で「時間対効果」が全く議論されなていないのは、「これまで教員という「労力」が無限に調達できた。」からだと私は思っています。教員には残業代がつかず(給特法)、教員に「終わるまでやれ」と命じれば、命じられた教員は「深夜11時まで残ろうが、土日に出勤しようが」、終わるまでやっていたのです。つまり、コストがかからなかったのです。(実際はこれまでも、教員が疲弊したり授業準備の時間が削られたりと、見えないコストはかかっていたはずですが)。

ちなみに給特法については、内田先生の著書が詳しいです。以下は私の内田先生の著書のレビュー

 

karly1008.hatenablog.com

 

しかし、教育現場にも「働き方改革」が持ち込まれたことで、学校現場は「何を残し、何を削るべきか」の議論を余儀なくされているのです。その中で「時間対効果」の考え方は少なからず、各学校現場単位では出ていたのではないかと推測します。

それらのひとつの道しるべとなるこの本はとても価値のある著書だと思います。

 

問題を解決する本ではないです。

ビジネス書に近い。「問題が起きたらこうやって考えるといいよ」って考え方を提案しているだけの本です。事例に対して明確な回答(こうすればよい)が示されている事例のほうが少ないので、基本はこの本の考え方を基に自分で考えて、探索して解決法を考えなければいけません。

というのも当たり前の話で、ひとくちに学校と言っても実態は本当に多種多様であり、抱える問題も一緒ではないですからね。例えば「宿題を出すべきか出さないべきか」の事例でも、まとめの項ではなんだか煮え切らない言い方になっているように感じます。これはある意味当然で、宿題の意義が学校によって全く違うものになってくるからです。ただ、宿題の学習効果自体は小さいものである(やらないよりはやったほうがある)という科学的根拠が前提ですけどね。

 

また、本書のエビデンス」の軸は「子どもに学習効果があるか」になっているため、「指導案がいるべきかいらないべきか」など、現在のエビデンスからは結論を出せないものも多々ありました。教育分野の研究って最終的には子どもの学習効果に帰結しますからね。業務の事務処理の効果などはかなり議論が難しいとは思います。(ただ、時間対効果の考え方は必要なことです。)

 

大事なのはその考え方「何かエビデンスはあるか?」「それにかかる労力と期待できる効果はどれくらいか?」この感覚をもってやる教員が増えることを、一教員としては思います。

 

心に残った部分

 

「基本的には、宿題をする児童・生徒ほど高い学力であること、宿題の量よりも学習方法や保護者の関与のほうが学力に与える影響が大きいことがわかりました。」

P.53「テーマ4 意見真っ二つ!? 宿題は学力向上を促すか?」より

 

宿題のエビデンスを示した事例です。このエビデンスをもとに「宿題は出すべき」っていう人と「出さなくてよい」っていう人どっちもいそうですね。

ちなみに私は「意味のある宿題になるように出す」ほうがよいのでは、と思っています。学校の宿題でありがちな「ノートに1ページ漢字書き取り」や「何回音読」っていうのは「作業化」して効果が薄くなるので辞めたほうがいいと思っています。

ただ、学校というのは横のつながり(同学年の違う学級)がすごく大事なので、そこはしっかり話し合って決める必要があるとは思っています。

 

 

「単にICT機器を導入したからといって児童・生徒の学力が大きく向上するとは言い切れません」

P.64「テーマ6 増えてきたICT機器の「時間対効果」はいかに?」より

 

ICT機器はツールですからね。その勉強の目的に合わせ、「これまでの方法よりもICTを使ったほうが効率がいい」ってものから導入しないとね。

あと、多くの公立学校で問題になるのがICT機器少なすぎ問題ね。タブレットが全学で5台とかね。本当に全校生徒にわたすことができたらいろいろとできること想像は膨らむんですけど。知り合いのお子さんが通う私立小学校では、一人1台iPadが支給され、宿題や課題はタブレットを介して配布・提出するそうです。そこまで本気で取り組めたら時間対効果も高くなりそうですよね。

 

まとめ

結構読みやすくすぐ読める。エビデンスとか費用対効果とか考えたことのない同僚や先輩教員の机に置いてみては?(笑)

「整理が苦手教員」がEVERNOTEを使ったら結構解決した話

はじめに

私が学校で EVERNOTEとSCANNABLEを使い始めて2年ほど経ちました。

今の職場でもそうなのですが、文書・連絡の扱いが紙ベース(というか古い)学校という現場において、「整理整頓が超絶苦手教員」の私は大変辛い思いをしていました。

そこで、EVERNOTEを自分の業務に取り入れてみたらかなり業務の効率が改善しました。今日はそんな話。

 

1.EVERNOTEの概要

 

Evernote

Evernote

 言わずと知れた、クラウドにノートを保存しておけるやつ。

ノートに保存できるコンテンツの種類が幅広いのがありがたい。

 

Evernote Scannable

Evernote Scannable

 紙をスキャンしてPDF化しておける。最初スキャンしたときは精度高くでびっくりした。

 

2.整理が苦手な教員はこうなる

 

さて、学校という職場は扱う紙の種類(枚数)がめちゃくちゃ多い。そしてそれが雑に扱われるので、私のような整理苦手勢には辛い。

たとえば、ある日の1日、私の机に置かれた(個人のレターボックスに入れられる)紙の種類。

 

 

保護者宛文書のコピー1枚(担任参照用。とりあえずもっておけば良いが、使うことはほとんどない)

発行前の学年だより1枚(誤字脱字等をチェックして学年主任に渡す)

教員用行事後反省アンケート1枚(記入して担当のせんせいにわたす)

勤務に関わる書類2枚ホチキス留め(1枚は記入して管理職に報告。もう1枚は自分で保管。内容はすぐ参照できるようにしておく)

同じ学年の若手先生の研究授業の指導案6枚ホチキス留め(授業前に目を通しておき、当日の授業の時間に持っていく)

 

いつもではないですがこんな感じ。夕方、教室から職員室に戻ってくると、机上にはなんらかのプリントが置かれていることがほとんどです。

 

整理が得意な人なら、(あるいは学校業務に慣れた人なら)捨てるものととっておくもの(すぐ取り出せるようにしておく)こともできるのかもしれないが、わたしは昔からどうにも苦手で、「書類をどこにしまったのかわからなくなる」(捨ててはいないことだけは自分でもわかるが、すぐに取り出せない)ことがEVERNOTEを使うまでは非常に多くあり、これが業務の効率をさげていたような気がします。

 

私が現在勤めているような職員80名越えの学校なんかだと、要録の処理の仕方や、日直のやり方など、の連絡などはほとんどプリントを配布することで済まされることがほとんどなのです。

配布されてしばらくした頃に、その内容が必要になっても、探せなくて困る、みたいなこともありがちでした。

 

3.学校でのEVERNOTE

 

そこで私はSCANNABLE で配布プリントをスキャンしてその場で捨てるということをやりはじめました。文書をスキャンして精製したファイル名は後からキーワードで検索がしやすいものにしておきます。これによってとっておく必要がなくなります。よって手元に残るのは、何らかの提出が必要なもの(紙のままおいておくべきもの)だけになります。(子供の個人情報などの書類は、決まった場所が学校にあるはずです)

 

 電子化(EVERNOTE)のメリット

机上がきれいになる。

文書をとりあえず所持しておく、ということをしなくてよくなり机上がきれいになった。以前はフラットファイルに綴じるようにしていたが、年度末にはフラットファイルが3~4冊になってしまうし、シュレッダー年度末にしなくてもすみ手間が分散された。

一度配布された文書を探すのが圧倒的に楽に。

「前に配った資料に書いたから確認しといて」みたいなことを言われた時にキーワードを入れることですぐに端末で参照できるので、紙の山から探す、みたいなことがなくなった。

指導案とかも入れておけば、授業の当日もタブレット1つもっていけば済むし、授業を見ながら、昨年度やその前の指導案なども引っ張ってきて、その場で比較、みたいなこともできて学びにおいても効果的になった。

職員室以外でも見られる

クラウドに保管されているため自分の机にいかなくてもすぐに参照できる。子どもがもってきた連絡帳にに「昨日配布されたプリントなんですけど」なんて質問があったときもその場で確認ができます。個人用のタブレットなどがあると捗ると思います。(スマホでも見られますが、小学校でスマホを先生が出しているのを快く思わない児童や保護者多いので・・・)

 

デメリット

スキャンが手間

一枚一枚やらなきゃなので手間は手間です。スキャン→検索しやすいようにファイル名付け、保存1枚30秒くらいはかかるかな?このファイル名づけが地味に面倒ですが、のちの検索のことを考えるとサボれないところです。

あと、シャッター音がなるので職員室ではしづらいです。私は放課後、誰もいない教室で1日の終わりに一気にやっちゃうことが多いです。

EVERNOTEの動作が遅い。

これはある程度しょうがないと思うんですが、EVERNOTEの検索ってやや遅い気がするんですよね。

すぐ出したい時の「すぐ」が紙で保管している「整理の上手な先生」に負けていることもあります。でも結果的には検索ができているので私としてはいいんですけど、隣の先生に「所詮機械なんて・・・」って言われることもあります。いいんです。自分に合っている方法を使っているだけなので。

 

ページ数が多い資料は大変。スキャナー欲しい。

 

 ページ数の多いものは学校のスキャナーでやっちゃいます。共有のものなのと、枚数が少ないとSCANNNABLEの方が早いのでたまに。

 

重要書類はできない。

さすがに個人情報や重要書類に関しては使うのを控えています。

 

本来はデータ配布してほしい。

ここまで読んで「ん?」って思う人もいるかもなんですが、私がやっていること、実は2度手間な場合、とても多くあります。書類のデータをPDFでもなんでも、職員の端末に送ってもらえればすむ話なんですこれ。私が今やっていることって

①作成者がPCで作成→ ②作成者が紙に印刷して配布 →③私が紙をスキャンしてデータに直す→ ④私が端末で見る

ということなので②③いらないやん、ってことなんですよね。

でも、学校や役所ってそういうところで、まだまだ変わりそうもありません。市の教育委員会からの通知もすべていまだにFAX(!)で来ますからね。それをコピーして我々に配られると。

 

一度、雑談してる中で、書類とかも電子化してほしいですよね~、って言ったことがあるんですが、「紙に刷られないと見ない」って言われたことがあります。いや、仕事なのでそうなったらちゃんと見ると思うんですけどね。紙じゃないとダメな人は自分で印刷すればいいじゃないですか。作成者が印刷する手間もなくなるし、資源的にもいいと思うんですけど。それとも紙で配布って当たり前?民間の会社さんではどんな感じなんでしょうか。

 

 まとめ

こういうのって組織一気にやると効率性ってグッと上がると思うんですけど、まぁそんなこといってもしょうがないので個人でできる効率化、チマチマと進めています。私的にはEVERNOTEが私の業務の効率化に寄与している部分は大きいですね。

書類の電子化以外でもEVERNOTE結構業務に使える部分多いですし、他のアプリ、個人的に使っています。

便利な世の中なのに、先生方、もっと使えばいいのにな〜。と思う今日この頃でした。

なんだかんだ教員は上級国民か? 「上級国民/下級国民」を読んだ感想

 

1冊読み終えたので感想まとめ

 

 

本の概要

個々最近ネットで飛び交う「上級国民」「下級国民」という言葉。(例:池袋の事故を起こした男性が逮捕されないのも、マスコミが”さん”づけで報道しているのも『上級国民』だからに違いない。」※実際は違うけど。)

この「上級/下級国民」という概念はこれまでの「エリート」「セレブ」とは異なり、階級間を努力や行動で移動できるものではなく、個人の努力ではどうにもならない構造である、ということを著者は指摘している。

本書では3つのパートで上級/下級国民について分析している。

 

本の感想

結論から言うと、気持ちは暗くなる本。最後の結論まで、「〇〇すればまだ間に合う」「これから〇〇すれば大丈夫」みたいな希望はほとんどなく進んでいくので、最後まで明るくはならない本です。ま、タイトルからしてわかるやろ、って感じですけど。

ただ、結論はともかく現代社会の構造をいろいろなデータから分析しているところはおもしろい。こういうのが社会学の本を読む楽しさだと思うし、個人的にそういう本を多くつい手にとってしまいがです。

 

章ごとに気になったところ

PART1

平成の労働市場によって下級国民が生み出された経緯などを分析しています。そして令和がどうなっていくのか。

平成中期まで「働き方改革」がほとんど進まず、ここ最近(平成末期)に「働き方改革」社会全体的に急速に進んでいった理由、を「団塊の世代の引退」が大きな要因と結論づけた視点がおもしろかった。つまり、「団塊の世代の既得権を害する改革は、『団塊の世代』によって阻まれていた。『団塊の世代』が定年しいなくなることで、やっと「改革」に手をつけることが可能になった」ってことですね。しかしこれは同時に「社会保障の「改革」は「団塊の世代」に阻まれおそらく不可能になるだろう」ということも著者は示唆しています。

 

その他気になったフレーズなど

最低賃金の引き上げは若者の雇用には悪影響”

 

PART2

上級/下級国民について「モテ/非モテ」にもつながることを論じています。

自由恋愛が約束された社会においては、下級国民(特に男性)は、社会的地位や財力がをもたないものは「生涯未婚」の「非モテ」になり、社会的地位や経済力を持てる男性は生涯に複数回結婚ができる「モテ」になる。その2極化が世界各地で起きてくる。非モテテロリズムにつながる例も紹介しています。

 

その他気になったフレーズなど

“一定の年齢をすぎると「男同士の絆」はほどけ、男は「友達」をつくれなくなるのです。”

 

PART3

世界全体でも「上級/下級」の分断が起きていることをアメリカのトランプ大統領の支持者などの例から、論じています。先進国各地で共通することは「マジョリティの分断」なんですね。

この章は前提知識が少なすぎてイマイチ頭に入ってきませんでした。ニュースとかちゃんと見なきゃだめですね。

 

その他気になったフレーズなど

グローバル化によって数億人が貧困から脱出したことで、世界全体における不平等は急速に縮小しているのです」「世界が『全体として』ゆたかになった代償として、先進国の中間層が崩壊したのです。”

 

 

教員は「上級市民」なのか?

自分自身で「上級国民」なんて思ったことは一度もないですし、考える意味もないと思っています。が、「市民の皆さん(特に保護者)からそう思われていたらやだな」とは思う。でも、この本に書いてあることを見ると、安定した収入と、結婚・子どもがいる人多いしな~、と。それは上級国民の条件にあてはまってるな~、と。給与面では、あまり不満を持ったことはないです。(仕事量の割に給与をもらっていない教員が世の中に多いのは確かだと思います)。

ただ、それでも私自身は生活きついと思ってしまっていますけどね日々。子育てに時間と金がかかりすぎワロエナイ。

 

やはり学力は大事だが・・・

学歴と収入にはまぎれもなく相関があるのは日本社会で顕著ですが、今後の日本で過ごしていく自分(と家族)や学校で教えている子どもたちを考えたときに、本書のあとがきに書かれたことが気になる。

今後もなんらかの「分断」が起きていくであろう社会において、個人が生き延びていくためにとりうる戦略を2つの方向性から指摘していました。ひとつはエンジニアとかデータサイエンティストなどの高度化に対応する技術を育てていく作戦。もう一つは、SNSでのインフルエンサーYoutuberといった評判資本をマネタイズしていく作戦。ただ。これらの潮流に乗れる人はごく一部だとも書かれています。

 

どのような教育を子どもにしていったらいいのか。結論はでません。ただ、これからも荒波の中で生きていかなければならないことは確定しているっぽいです。ん。がんばろう。

重度障害の国会議員誕生のニュースを見て考えたこと

2019年7月21日に投開票された参議院選挙で注目された2人の議員について、巷ではいろいろと話題になっているみたいですね。

個人的に思ったことを。

 

 

重度障害の議員さんについて 

7月30日毎日新聞の記事を参照。

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190730/k00/00m/010/267000c

・れいわ新選組が比例で2名分議席獲得

・2名の議員さんは重度障害で常時介助が必要。

・介助にかかる費用は「特別に」参議院が出す

 

 

参院が「特別に」当議員の介護費用を出す。

つまり、いまの法律では「働いたり通勤したりしてるくらい元気なら、介助者はキホン全額自腹で雇ってね。家にいるくらい重度なら9割は国が出すけどね。もしそれでも働きたいなら職場に「介護費出して」って頼みな」っていう建て付けになっています(と私は読みました)。

 今回の場合、全額は障害をもった国会議員側が「全額自腹しながらでは議員の仕事はできない」と訴え、参院側(職場側)が「じゃあしばらくはウチが出すよ」という流れになったわけです。

 

私自身は「当然だろ」って思ってる

 

いやむしろ出さない選択肢あるの?って思ってます。仮にも国民が投票し、選挙で当選し、国民の代表としてなった議員ですよ。(選挙制度の仕組み云々はおいておいて)。国民の代表が「障害が理由で国会議員として働けない」って、近代の国家としてどうかと思っています。

 

「国会議員だけ特別なのか」「一般企業で、全額会社負担はありえない。(それを認めると、会社側が障害者を雇うのをしぶる」というご意見、これは正しいと思います。

だけど、特別でもなんでもいいと思っています。

 

前例をつくるのが大事。

特別支援学校で障害をもった当事者(家族含む)と多くかかわっていると、障害をもった方たちはまだまだ社会で生きづらそうにしているのです。障害者に対する配慮ははっきりいってまだまだ浸透していないと思っています。

そして、例えば障害をもった人が「学校でに入学したい」「どこどこで働きたい」「どこどこの施設で遊びたい」などを望んだときに(健常者だったら何も考えずに望めること)、マジョリティ側に一番言われる理由が「前例がないんで・・・」「やったことないんで・・・」という理由です。

学校でもしばしばそういうことを立場上言わないといけないことがあり、大変心苦しいところもあります。例えば「〇〇してほしい、介助してほしい」と当事者から希望されたときに、「いやそこまでの配慮はやったことないし・・・・そういや人手もないし、なにかあったら困るし、、、、」と。

(ちなみに、「合理的配慮」という考え方がありまして、まぁかんたんに言うと、「障害を理由に活動の制限がされないように、できることをやろうね」ってことです。)

news.yahoo.co.jp

もちろん断る側は様々な事情やリスクを考えて断っているんだと思うし、そこに悪意や差別意識はありません(つもりです)。

だけど当事者側からしたら、「前例がない、ってなに?できるかどうか少し考えてよ」って感じで正直意味わからんわけですね。受け入れ側に悪意や差別意識がなくても結果からしたら差別と思うことも多々もあるでしょう。

 

前例をつくるのはパワーもった人が必要

障害者に限らず、初めてやることについて「前例がない」状態から「前例をつくる」ってのは並大抵のことじゃないですよね。

けど、それを誰かパワーがある人が既存のルールや枠組みを無理やり変えてねじこんでいかないと、変わらないんですよ。特に社会的弱者の議論は、常に脇におかれた状態になりますので。確かに、わがままに見えるかもしれませんし、弱者は規則を守らなくてよい、というつもりもありません。

 

ただ、国会という日本の中心の場で、「重度障害者が議員となった」ひとつの前例をつくろうとしている。コレ自体はひとつ意味のあることではないでしょうか。私はそのためなら、介護費や、バリアフリー化くらいの特別措置、くらいやってあげたらいいんじゃないかと思っています。そうでなくても国会や議員さんって、特別なもの・場でしょ?手当やら何やら今更ですよ。そこで一般企業と比較するのもどうなの?とちょっと思います。

 

そして、その前例をつくったパワーの持ち主である山本太郎さん(もちろん2名のれいわ議員さんも)は本当にすごいなと思います。(あまり人柄は好きではないのですが・・・)まぁせっかく一石を投じていただいたわけだし、頑張って欲しいと思います。

 

もちろん、評価はシビアに行こう。

これまで、れいわの議員のお二人を擁護するような感じで言ってきましたが、政治家のみなさんに望むことはただ一つ。「我々の生活をよいものにしてくれ」ということ。そしてれいわの皆さんに投票した人たちの期待は、「障害者の生活の向上」ですよね。

なので、冒頭出た介護費の特別待遇の話も、「特別」ではなく「制度」として一般企業でも適応できるような枠組みを作ってほしいですし、この社会が障害をもった人でも生きやすいものにしてほしい。

だから、とりあえず今はじっくり見ていこうと思います。

国会議員として、その使命が果たせないのであれば、その評価は選挙の結果で国民の審判があるでしょうし、働く前から「できるわけない」など決めつけることがよくないですよね。

 

まとめ

・れいわの2人の議員さんは前例をつくったという点で一定の評価

・議員としての評価はこれからみんなでしていけばよい

 

 

れいわの2人の議員さん、無事に初日登院できたみたいですね。 

 

 

karly1008.hatenablog.com

 

 

 

策略 ブラック運動会・卒業式 を読んでの感想

 

策略―ブラック運動会・卒業式 追い込み鍛える!行事指導

策略―ブラック運動会・卒業式 追い込み鍛える!行事指導

 

 

 

「ブラック」シリーズで有名な中村健一先生の著書。今年度2月発売だったのになかなか手に取れなくて、夏休み入ってやっと読めました。今日はその本を読んだ上で、自分が考えたことについてつらつら。ここでのブラックは「腹黒い」という意味のブラックです。

 

 

蛇足ですが、過去の「ブラック~」シリーズは全部読んでいます。特にブラック保護者・職員室は名著。

 

策略プレミアム-ブラック保護者・職員室対応術

策略プレミアム-ブラック保護者・職員室対応術

 

 

本の概要

小学校での行事(修学旅行、運動会、卒業式)の運営する教師がもつべき「策略」独特なブラックな言い回しで伝える。

「子どもの『優越感』をくすぐれ」など、キャッチーなタイトルのセクションが続く。

 

 

読んだ感想

1.これまでと変わらず読みやすい

中村先生の「ブラック〜」シリーズは、どれも読みやすく書かれているのですが本著も例に漏れず。全部読むのに30分かからない、話し言葉に近い平易な言葉を使って書いてくれているので、考えながら読まなくていいのでサクサク読めます。そしてやっぱりおもしろい。

実践の様子をありのままに書く構成なので、教員をやったことのある者であれば、読みながら著者の先生の指導やそれに対する子供の反応が頭に浮かんでくるでしょう。

 

2.きっと実践に使える

この本に書いてある実践、おそらくすぐに使えるネタばっかりだと思います。どの学校でもあるような指導場面が多く書かれているし、理屈も書いてあるので自分が教えている子たちの実態に合わせて使えるでしょう。

 

3.もやもやが深くなった。

中村先生のいくつかの本を読んできましたが、初めてもやもやとした気持ちで本を閉じました。

その理由は、実は読む前からもやもやすることわかっていたんです。その理由はこのあと。

 

私、行事嫌いなんです。

実は私、運動会や、宿泊活動、卒業式といった行事が軒並みあまり好きではないんです。それでよく学校の教員やってるな、って感じですが、とにかくいつも通りに日課を進めていたい人間なんです。

 

行事の準備の時間って楽しくないのよ

そして、今年度初めて小学校に勤めるようになってより感じることなのですが、基本的に行事の準備や練習ってつまらなくなりがちです。理由はいくつかあるのですが、本著にもある通り、えてして教師の説教や怒号のオンパレードになるからです。(これはしょうがないと部分も多くあると思います。少ない練習/準備時間で行事を行わざるを得ないので教師主体でどんどん進めないと間に合わない日程が組まれている場合がほとんどです。)

そして私は教師主体の準備時間が本当に苦手で、これまで「楽しくない」という気持ちでずっと練習や行事に参加(時に指導)してきました。

 

ただ、本著を読むと、その「楽しくない時間」がしっかりあったから、これまで平和に行事ができていたのかも、と思うようにもなりました。私がこれまで頭の中でもっていた子ども主体の行事というのは理想論なのかもしれません。これまでブラックシリーズを何冊も出してきた著者の中村先生は困難校に勤めた経験から「現実」を知り、ブラックになったとも書いています。

 

行事はやらなければならない

学校界隈でも働き方改革や部活の見直しなどの流れから、行事の精選や縮小に取り組んでいる学校も少なくないようです。それ自体は歓迎すべきことだと思います。しかし、少なくなったとしても、行事自体がなくなることはこれからもないでしょう。行事があれば、準備も必要なわけで、それをどう円滑に進められるか、やはり教師の力量が問われていくでしょう。

まとめ

個人的に思うところはあります。私には、全面的に中村先生の指導法を肯定することはできませんが。ただ、運動会やその他行事の主担になっている先生にとっては参考になるのは間違いないと思いますよ。

(でも若手に一番おすすめなのは、やはり「ブラック保護者・職員室対応術」ですね。)

【学校】夏休みの教員の仕事〜子ども・保護者対応編〜

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夏休みは夏休みでやることいっぱい

はい。前回の記事で夏休みは教員も子供以上に嬉しく思ってるよ、って話をしました。

 

karly1008.hatenablog.com

 

 

ただ、学校職員にとって夏休みは「休み」ではないんですね。「心落ち着けて仕事ができる期間」だから嬉しく思っているのです。子どもが学校に来ないなら来ないなりにやることは沢山あります。むしろ、子どもが来ないので時間はあるだろ、という前提で、平常日課中にはなかなか行われない業務がガンガン詰め込まれます。

 

さて、「夏休みって先生は何してるの?」という問いに答えられるように、あるいは自分のために、夏休みの業務を整理していきたいと思います。第一弾は「子どもの対応系」について

 

夏休みならではの子ども・保護者の対応

夏休みでも実は保護者、子どもに対応しなければならないことはたくさんあります。先程「夏休みは子どもが来ない」と書きましたが、嘘です。夏休みでも子ども(保護者)は来ます。正確には「来る日もある」ですね。

じゃあどんな対応があるかというと。

 

1.個人面談系

保護者との面談系を夏休みに設ける学校は多いです。普段の平日、授業やってるとなかなかできないので夏休みで。これがまず大変だったりします。35人クラスでかつ全家庭実施だと、日程調整だけで一苦労です。さらに実際の面談では、1家庭10分だとしても全員で350分(6時間弱)。もちろん10分で終われない家庭もいくつかあるのが恒例です。(生活上課題のあるお子さんのご家庭や、配慮が必要なご家庭など)もちろん学校の日程に合わせて都合をつけてくださっている家庭には感謝の気持ちをもっていますが、35人を一人で対応するとなるとなかなか大変です。

35人クラスだと1家庭10分だとしても350分(6時間弱)かかるわけです。実際には保護者の都合や担任の部活や出張などなどいろいろあるので何日かに分けて実施します。

 

 

2.子どもの登校日系

水泳指導(プール解放)や、補習を夏休みに設けている学校(自治体)も多いです。

子どもたちの参加は学校によって自由参加だったり原則全員参加だったりしますが、基本として管轄するのは教員となります。待ち構えて

私個人としてはプール開放は学校の役割ではないと思っています。命にかかわることですし、開放する側の労力がかかり過ぎる。ご家庭や子どもとしてはタダでプールに入れて嬉しいとは思いますが。

 

小学校では1. 面談系、2.登校日系 は7月に集中させる学校が多いようです。また、日数なども学校により差があるようです。

 

3.部活の監督・指導

これは上記2つと比べて異質なのでまったく別の業務だと考えて良いです。小学校は力を入れているところとそうでないところの差が大きい印象ですが、中高は一貫してヤバくて、夏休みが部活の予定で全て埋まった先生の話も各所から聞こえます。大会等も夏休みに行われますもんね。幸いにも(?)私は部活指導を一度もしたことがありません。これだけでもだいぶ楽して生きてる部類の教員ですね。否定はしません。

部活のヤバさについては、内田先生の本がわかりやすい。

私も2年ほど前に読んで感想書いてた(この頃の私は自分のことを教員と公開していなかったみたいです)。

 

karly1008.hatenablog.com

 4.イレギュラー系

「夏休みの予定」には入っていないけど意外とある。

たとえばクラスの子が大怪我したので様子を電話で聞いたり(必要ならば見舞いなども)、近所の夏祭りを見回りしたり、(私は呼ばれたことありませんが)クラスの子が万引きしたので店に呼ばれたりとか。まぁ長期の休みはいろいろ起こる。不登校気味の子の家に家庭訪問に行ったこともありますかね。

 

まとめ

こんなところでしょうか。たぶん学校によって夏休みの業務はかなりちがうと思いますが、直接子どもにかかわる業務はこのへんかと。子ども・保護者対応ということで、当然適当にはできないことですけど、一方で「本当に必要か?」(プールとかね)ということもあるな〜、と思ったり。

では、夏休み業務第2段も書きます。近いうち。