なんだかんだ教員は上級国民か? 「上級国民/下級国民」を読んだ感想
1冊読み終えたので感想まとめ
本の概要
個々最近ネットで飛び交う「上級国民」「下級国民」という言葉。(例:池袋の事故を起こした男性が逮捕されないのも、マスコミが”さん”づけで報道しているのも『上級国民』だからに違いない。」※実際は違うけど。)
この「上級/下級国民」という概念はこれまでの「エリート」「セレブ」とは異なり、階級間を努力や行動で移動できるものではなく、個人の努力ではどうにもならない構造である、ということを著者は指摘している。
本書では3つのパートで上級/下級国民について分析している。
本の感想
結論から言うと、気持ちは暗くなる本。最後の結論まで、「〇〇すればまだ間に合う」「これから〇〇すれば大丈夫」みたいな希望はほとんどなく進んでいくので、最後まで明るくはならない本です。ま、タイトルからしてわかるやろ、って感じですけど。
ただ、結論はともかく現代社会の構造をいろいろなデータから分析しているところはおもしろい。こういうのが社会学の本を読む楽しさだと思うし、個人的にそういう本を多くつい手にとってしまいがです。
章ごとに気になったところ
PART1
平成の労働市場によって下級国民が生み出された経緯などを分析しています。そして令和がどうなっていくのか。
平成中期まで「働き方改革」がほとんど進まず、ここ最近(平成末期)に「働き方改革」社会全体的に急速に進んでいった理由、を「団塊の世代の引退」が大きな要因と結論づけた視点がおもしろかった。つまり、「団塊の世代の既得権を害する改革は、『団塊の世代』によって阻まれていた。『団塊の世代』が定年しいなくなることで、やっと「改革」に手をつけることが可能になった」ってことですね。しかしこれは同時に「社会保障の「改革」は「団塊の世代」に阻まれおそらく不可能になるだろう」ということも著者は示唆しています。
その他気になったフレーズなど
“最低賃金の引き上げは若者の雇用には悪影響”
PART2
上級/下級国民について「モテ/非モテ」にもつながることを論じています。
自由恋愛が約束された社会においては、下級国民(特に男性)は、社会的地位や財力がをもたないものは「生涯未婚」の「非モテ」になり、社会的地位や経済力を持てる男性は生涯に複数回結婚ができる「モテ」になる。その2極化が世界各地で起きてくる。非モテがテロリズムにつながる例も紹介しています。
その他気になったフレーズなど
“一定の年齢をすぎると「男同士の絆」はほどけ、男は「友達」をつくれなくなるのです。”
PART3
世界全体でも「上級/下級」の分断が起きていることをアメリカのトランプ大統領の支持者などの例から、論じています。先進国各地で共通することは「マジョリティの分断」なんですね。
この章は前提知識が少なすぎてイマイチ頭に入ってきませんでした。ニュースとかちゃんと見なきゃだめですね。
その他気になったフレーズなど
“グローバル化によって数億人が貧困から脱出したことで、世界全体における不平等は急速に縮小しているのです」「世界が『全体として』ゆたかになった代償として、先進国の中間層が崩壊したのです。”
教員は「上級市民」なのか?
自分自身で「上級国民」なんて思ったことは一度もないですし、考える意味もないと思っています。が、「市民の皆さん(特に保護者)からそう思われていたらやだな」とは思う。でも、この本に書いてあることを見ると、安定した収入と、結婚・子どもがいる人多いしな~、と。それは上級国民の条件にあてはまってるな~、と。給与面では、あまり不満を持ったことはないです。(仕事量の割に給与をもらっていない教員が世の中に多いのは確かだと思います)。
ただ、それでも私自身は生活きついと思ってしまっていますけどね日々。子育てに時間と金がかかりすぎワロエナイ。
やはり学力は大事だが・・・
学歴と収入にはまぎれもなく相関があるのは日本社会で顕著ですが、今後の日本で過ごしていく自分(と家族)や学校で教えている子どもたちを考えたときに、本書のあとがきに書かれたことが気になる。
今後もなんらかの「分断」が起きていくであろう社会において、個人が生き延びていくためにとりうる戦略を2つの方向性から指摘していました。ひとつはエンジニアとかデータサイエンティストなどの高度化に対応する技術を育てていく作戦。もう一つは、SNSでのインフルエンサーやYoutuberといった評判資本をマネタイズしていく作戦。ただ。これらの潮流に乗れる人はごく一部だとも書かれています。
どのような教育を子どもにしていったらいいのか。結論はでません。ただ、これからも荒波の中で生きていかなければならないことは確定しているっぽいです。ん。がんばろう。