グレ教員の日々の感想

学校嫌いな小学校支援学級教員。日々の思いを忘れないように書くブログ。子育て、学校、読んだ本とか。専門は発達障害支援。

「教育実習なしで教員免許取得」!?〜学生さんが一番かわいそう、と思った話〜

「教育実習」をしなくても教員免許がゲットできる?

教育実習なしでも教員免許 コロナ禍特例、文科省が通知

https://news.yahoo.co.jp/articles/817e9afe2571bdaac88868609948a014ff08a79b


本日、文部科学省が教育実習を、大学の授業で代替できる、という特例を出しましたね。
コロナ渦で、実習生の受け入れ先(一般の小学校・中学校・高校・特別支援学校)が受け入れ困難で、学生が教育実習ができず、免許取得できない状況への対応ですね。
記事では「真にやむをえない場合」「(教育実習は)原則はやってもらう」ということとなっていますが、これにより、教育実習未経験で教員免許を取得する学生が出てくる可能性がでてきたわけです。

予想される反応としては、「実習していない学生が教員になってもいいのか?」「教員の質の低下につながるのでは?」とかがあるかな、と。

 

正直仕方ないよね


まぁ地域によって全然違うんだろうけど。
まず学校の負担。
私の勤務校も、都心近い立地もありまして。いつ感染が広がってもおかしくない状況です。その中で、あまり外部の人を数週間も出入りさせたくないってのもありますよね。

仮に学校で感染が広がったとき、そこに教育実習生が入っていたら何処が責任とるの?とかね、余計なことも考えますし。

そもそも、教育実習生を受け入れる、っていうこと自体、学校としてはとても大きな負担なんですよね。これは内部にいなければわからないことですが。
これを、感染対策で雑務は増え、学校自体疲弊している中で、実習生を受け入れってののは相当な負担。学校の状況次第ではありますが、教育実習生を受け入れることができない(断る)学校が今後増えてくるのは予想できます。

かといって今の教員志望の学生に免許を与えない、ってことは、絶対できないと思います。
だって人足りてないんだもん。今って毎年多くの新卒の教員が採用されますから、採用希望者数が教員免許が取れないせいで目減りされたらそれはかなり痛い。日本の学校は採用試験のウラで「採用試験落ちた人を「講師」で現場の穴埋めに使う」という前提の設計になっているので、倍率が見かけ上高くても実質必要人数は足りてなかったりします。

まぁなので、「実習できなくても免許与える」措置をしないと、多分来年以降全国いたるところで「詰む」自治体が出てくるのは容易に想像できるので仕方ない、っていう感想です。

 

実習しないと教員の質は低下する?

で、「教育実習なしで教員免許与えて、教員の質は低下しないのか?」っていう指摘についてですが。

結論から言うと「しない」っす。まぁ私の考えですが。正しくいうと、「教育実習が、教員の質を上げる効果が少ない」です。そもそもたかが2、3週間の実習で、学生が習得できる技術なんてたかが知れてるし、巷で言われる「教員の質」を本当に上げたいなら、教員養成課程全部に言及すべきですね。

まぁ「身だしなみをちゃんとする」とか「勤務時間内にスマホを触らない」とか、そういった学校現場の常識を、学生のときに知れる、みたいな効果はありますけどね。「教員の質」って教養に長けてる、とか、指導力がある、とかだと思うので、教育実習自体の影響力は本質的には小さいかと思っています。
実習なんて「教員養成」のカリキュラムのわずか一部だし。

そもそも私は、今の教員採用のシステムや、教員免許取得のプロセスについては強く批判的で、「今のシステムを続けている限り、教員の質は下がり続ける」と思っています。
今、教員免許を取得するのって特別大変なことじゃない。
大学に通える経済力があり、実習含む必要単位を取る根気さえあれば、免許だけは取れる。免許取得過程に、特殊な技能や知識の習得は求められませんからね。授業を受けさえすればいいというか。この辺が国家試験がある医師免許とかとは若干違うんですよね。
教育実習についても、基本的に「2,3週間、休まず出勤する」ことさえできれば実習の単位は普通はもらえる。仮に実習の受け入れ先が「うわ、コイツ教員なってほしくねぇ〜」って思うくらい態度が悪くても、通えさえすれば「教育実習」の単位はもらえてしまいます。

まぁなので、くり返しいうと、「教育実習をしたかしてないか」は教員の質には「ほぼ」影響しない、というのが私の主観ですね。

 

というか、教育実習って、学生のためにあるのよね

今の「教育実習」って、学生のための、「オレって教員に向いてないかも?」をチェックする場以外のメリットないと思うんですよね。
多分教員免許をとりたい学生って、まぁ「絶対教員なりたい!」とか「教員にめちゃくちゃなりたいわけじゃないけど、まぁ免許だけでも・・・」とか色々だと思うんですけど。
「試しに2.3週間働いてみよっか?」ってのが教育実習だと思うんですよね。多分、学生からすると、先生のイメージと、実際の先生の仕事、って結構乖離あると思うんですよね。実際に中から見て、「最初は夢見てたけど、やっぱり無理・・・」とか「教員の仕事できるかわからんかったけど、意外とできそう・・・」とか、そういうのを学生自身が確認する場だと思うんですよね。
さっきも言ったように、教育実習で得られる知識・技能、なんてたかがしれているので。「自分の適性を知る」ことのほうがはるかにでかい。

だから、「教員の質」云々の議論よりも、そっちの方が心配。
つまり、

 

「実習行かずに免許ゲット」→「なんとなく採用試験受かっちゃった」→「現場入ってみたらイメージとのギャップに絶望」→ソッコー退職

 

 

みたいなことがあるかもな〜、と。
「自分は向いてない」って学生時代にきづければ、そこから社会人になる前にに軌道修正はある程度できるでしょうからね。


なので。

来年入ってくる新卒教員が「教育実習していない」と言ってきたら、例年以上に優しくしようと思いました。

という話。